最終更新日:2026年9月24日
韓国の現地法人と支店の最大の違いは、「独立した韓国の法人になるか、日本本社の一部として拠点を置くか」です。この違いによって、責任の範囲、課税の対象、利益の送金方法、設立の条件が変わります。連絡事務所は、市場調査や連絡業務に限った3つ目の選択肢です。
ただし、韓国市場に初めて挑戦する段階では、「どの形態で進出するか」を決める前に、そもそも法人や拠点が必要かどうかを見極めるほうが先です。この記事では、3つの形態の違いを早見表で整理したうえで、ケース別の選び方と、設立前にマーケティング面で検証しておきたいことをまとめます。
※制度に関する内容は、JETRO(日本貿易振興機構)と国土交通省の公開情報をもとに、2026年9月時点で確認できた範囲で整理しています。制度や手続きは改正されることがあるため、実際の設立にあたっては、弁護士・会計士など現地の専門家に最新の要件をご確認ください。
韓国進出の3つの形態と違い(早見表)
韓国に拠点を置く方法は、大きく分けて現地法人、支店、連絡事務所の3つです。まず全体のイメージを見てみましょう。

| 項目 | 現地法人 | 支店 | 連絡事務所 |
|---|---|---|---|
| 法的な位置づけ | 韓国の法律に基づく独立した法人 | 日本本社の一部(会計・決算は本社と一体) | 日本本社の一部 |
| 親会社の責任 | 有限責任(法人と親会社は別) | 本社が全責任を負う | 本社が全責任を負う |
| 課税の範囲 | 国内外の所得 | 韓国で生じた所得 | 原則として対象外(事業を行えば支店と同様) |
| 本国への利益送金 | 配当に源泉徴収がかかる | 配当としての源泉徴収はなし | 該当なし |
| できる事業 | 外国人投資が制限される業種を除き幅広く可能 | 幅広く可能(支店形態を認めない業種あり) | 業務連絡や市場調査など、準備的・補助的な活動のみ |
| 最低投資額 | 外国人投資企業として登録する場合は1億ウォン以上 | 最低資本金の定めなし | なし |
| 登記 | 会社設立登記が必要 | 支店設立登記が必要 | 登記は不要 |
| 設立の目安 | 2〜3週間 | 2〜3週間 | 1〜2週間 |
| 税の減免 | 外国人投資企業として受けられる場合がある | 適用されない | 該当なし |
出典:JETROソウル事務所「韓国への進出方法に対するご案内(2024年2月)」、JETRO「外国企業の会社設立手続き・必要書類(韓国)」をもとに作成。設立期間はあくまで目安で、書類の準備状況により前後します。
現地法人:独立した韓国法人として事業を行う
現地法人は、韓国の法律に基づいて設立する内国法人です。日本の親会社とは会計や決算も別になり、法人格としても独立しています。
向いているケース
韓国で契約、雇用、販売を本格的に行う見通しが立っている場合に向いています。韓国の取引先と自社名義で直接やり取りしたい場合や、親会社のリスクと切り離して事業を進めたい場合も、現地法人が候補になります。
メリットと注意点
- 親会社は有限責任:現地法人と親会社は別の法人のため、責任の範囲を切り分けやすくなります。
- 税の減免の対象になり得る:外国人投資企業として登録すると、租税の減免を受けられる場合があります。対象業種や条件があるため、事前の確認が必要です。
- 外資100%も可能:外国人投資が開放されている業種であれば、外資比率100%で設立できます。
- 管理の手間が増える:会計・決算が日本本社とは別になり、韓国での税務申告や帳簿管理が継続的に発生します。
- 配当の送金には源泉徴収:利益を日本へ送る際は、配当として源泉徴収された後の金額になります。
支店:日本本社の一部として拠点を置く
支店は、外国法人の一部として韓国に置く営業拠点です。本社と会計・決算が一体になるため、法人を新しく作るよりも位置づけがシンプルです。
メリットと注意点
- 最低資本金の定めがない:現地法人のような最低投資額の要件がありません。
- 課税は韓国で生じた所得が中心:本社へ利益を送る際に、配当としての源泉徴収はかかりません。
- 本社が全責任を負う:支店の取引や債務は、日本本社が負うことになります。責任を切り離したい場合は不向きです。
- 税の減免は使えない:外国人投資企業向けの優遇は、支店には適用されません。
- 韓国代表の選任が必要:支店には韓国内の代表者を置く必要があり、その選任は本社の取締役会決議に記載する形になります。
- 業種によっては支店が認められない:事業内容によっては、支店の形態自体が認められない場合があります。
連絡事務所:市場調査と連絡に限った拠点
連絡事務所は、韓国での業務連絡や市場調査など、準備的・補助的な活動に限って置ける拠点です。会社設立登記や支店設立登記のような登記は不要で、設立の目安も1〜2週間と、3つの中で最も軽い手続きで済みます。
一方で、商品の販売や契約など、収益を伴う営業活動を行う拠点ではありません。本格的な事業を始める段階になったら、支店または現地法人への切り替えを検討することになります。
どれを選ぶ?ケース別の判断の目安
形態は「設立コストの安さ」だけでなく、責任範囲、税務、将来の事業計画を合わせて決めます。次の図と表は、状況ごとの考え方の目安です。

| 状況 | 検討する形態 | 理由 |
|---|---|---|
| 韓国での反応がまだ読めず、まず試したい | 拠点を置かずに検証する | 設立費用や管理の負担、撤退時の手間を避けられます。 |
| 市場調査や現地パートナーとの連絡が中心 | 連絡事務所 | 活動は限られますが、登記が不要で手続きが軽くなります。 |
| 売上・契約・雇用が発生する見通しが立った | 現地法人 | 独立した法人として事業を分けられ、外国人投資企業の優遇も検討できます。 |
| 本社の一部として、小さく早く始めたい | 支店 | 最低資本金の定めがなく、会計も本社と一体です。ただし責任は本社が負います。 |
どの形態にも一長一短があります。事業内容や業種によって使える形態が変わるため、迷った場合は、現地の会計士や弁護士に3つの形態を並べて比較してもらうのが確実です。
形態を決める前に、マーケティングで検証しておきたいこと
法人や支店を作ると、設立費用だけでなく、決算、税務申告、人員の管理が継続的に発生します。売れるかどうか分からない段階でこれらを抱えると、負担が大きくなります。
そこで、拠点を置く前に、次のような点を検証しておくと判断しやすくなります。
- 検索での需要と競合の状況:韓国のユーザーが、自社の商品カテゴリでどんな言葉を検索しているかを確認します。手順は韓国語キーワード調査のやり方で解説しています。Naverでの見つけてもらい方はNaver SEOの基礎知識をご覧ください。
- 販路の反応:越境ECやモールで小さく販売し、価格や商品説明への反応を見ます。日本からの販売の流れは日本から韓国へ輸出する方法、モールの選び方はQoo10とCoupangの比較が参考になります。
- 口コミとレビューの獲得:少数のインフルエンサーやモニターに商品を使ってもらい、韓国の消費者に何が響くかを確かめます。
- 商標とハングル表記:ブランド名の権利や韓国語での表記は、拠点の形態にかかわらず早めに確認すべき項目です。詳しくは韓国の商標登録は進出前にをご覧ください。
これらの検証は、韓国に法人がない段階でも進められるケースが多くあります。ただし、契約や決済、返品対応の条件は施策やサービスごとに異なるため、事前に確認してください。検証の結果、売上の見込み、必要な現地対応、取引先から求められる書類が見えてくれば、現地法人と支店のどちらが適しているかを判断しやすくなります。
設立手続きの流れと共通の注意点
現地法人の場合
- 外国人投資の申告
- 会社設立登記(裁判所)
- 事業者登録(税務署)
- 外国人投資企業の登録
支店の場合
- 支店設置の申告(外国為替銀行)
- 支店設立登記(裁判所)
- 事業者登録(税務署)
いずれの場合も、提出書類は韓国語で作成する必要があります。外国人が役員になる場合は、署名認証やパスポートの写しなどが求められます。書類の準備に時間がかかりやすいため、上記の目安期間より長くなることを見込んでおくと安全です。
よくある失敗
形態の比較だけで数か月止まってしまう
現地法人か支店かを決めることが目的化し、肝心の「韓国で売れるか」の検証が後回しになるケースです。形態の選択は、検証の結果を見てからでも遅くありません。
支店を選んだ後で、本社の責任に気づく
支店は本社の一部のため、取引や債務の責任は日本本社が負います。事業の規模やリスクによっては、現地法人のほうが適していることがあります。
業種ごとの制限を確認していない
外国人投資が制限されている業種や、支店の形態が認められない業種があります。自社の事業がどの区分に当たるかを、設立前に必ず確認してください。
よくある質問
韓国の現地法人と支店の違いは何ですか?
現地法人は韓国の法律に基づく独立した法人で、親会社は有限責任です。支店は日本本社の一部で、本社が全責任を負います。課税の範囲や利益の送金方法、税の減免の対象かどうかも異なります。
韓国に法人がなくてもマーケティングはできますか?
検索対策、SNS、インフルエンサー、PRなど、法人がない段階で進められる施策は多くあります。ただし、契約、決済、返品対応などの条件は施策ごとに異なるため、事前に確認が必要です。
支店と現地法人では、どちらが安く済みますか?
最低資本金の定めがないのは支店です。ただし、設立費用だけで判断せず、責任の範囲、税の減免、決算・税務の管理コストまで含めて比較することをおすすめします。
連絡事務所で商品を販売できますか?
連絡事務所は、業務連絡や市場調査などの準備的・補助的な活動に限られた拠点です。商品の販売など、収益を伴う営業活動を行う拠点ではありません。
設立にはどのくらい時間がかかりますか?
JETROの資料では、現地法人と支店は2〜3週間、連絡事務所は1〜2週間が目安とされています。書類の準備状況によって前後します。
最低資本金は必要ですか?
外国人投資企業として現地法人を登録する場合、最低投資額は1億ウォンとされています。支店には最低資本金の定めはありません。
まとめ
韓国進出の拠点形態は、独立した法人になる「現地法人」、本社の一部として置く「支店」、調査と連絡に限る「連絡事務所」の3つです。責任範囲、課税、送金、設立要件が異なるため、事業計画に合わせて選ぶ必要があります。
ただし、形態を決める前に、韓国で自社の商品が求められているかを検証することが先決です。検索、SNS、口コミ、販路のテストは、拠点がない段階でも始められることが多くあります。
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参考にした公開情報
- JETRO「外国企業の会社設立手続き・必要書類|韓国」
- JETROソウル事務所「韓国への進出方法に対するご案内(2024年2月)」
- 国土交通省「韓国の現地法人等の形態|海外建設・不動産市場データベース」
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